EVENT REPORT

EVENT REPORT

山の緑と海の青。
KENPOKU ART 茨城県北芸術祭のテーマカラーにふさわさしい、自然の色が映える神無月に、これまで茨城県北芸術祭のサポーターに携わってこられた方々、これからサポーターとして地域や芸術祭を盛り上げていきたい方などが一堂に会する「サポーターセッション 〜私のKENPOKU宣言!〜」が行われました。

この会の目的は、2016年開催時を振り返っての意見交換や今後に向けて地域の魅力的な場所や人・体験などについてのディスカッションをすること。どうしても初めて行われる芸術祭ではなかなか地域の方々の声を拾いきれなかったという反省を活かし、次回以降は地域の方ともっと一緒につくる芸術祭を目指し、その第一歩としてこの会が設けられたのです。
とはいえ、企画側として「芸術祭開催から一年も間が空いてしまっていて、地域の方は参加してくれるのだろうか…」とイベント開催前は不安でドキドキでした。でもそんな気持ちが吹き飛ばされるくらいパワーあふれる濃密なイベントになったので、イベントレポートとして昨年キュレトリアルアシスタントとして芸術祭に関わらせてもらった冠 那菜奈がお届けしたいと思います!

_mg_9127_pros-min

茨城県北芸術祭総合ディレクター 南條史生と2016年芸術祭参加アーティストによるトーク

2017年11月23日(木・祝)は山側・里山ホテル ときわ路、11月25日(土)は海側・うのしまヴィラとして、会場を分け開催しました。

会の冒頭では、まず茨城県北芸術祭総合ディレクターの南條史生さんから、芸術祭に関わってくださったサポーター、地域の方への感謝が述べられました。

南條史生

みなさん、今日はありがとうございます。
そして、昨年サポーターとして手伝ってくださった方々、本当にありがとうございました。
改めて御礼を申し上げたいと思います。
みなさんのおかげで芸術祭が大変成功したと思っております。

昨年は初めての芸術祭で、どうししても人手の無い中でいろんな作品をつくり、観客の対応をしないといけない状況だったところを、サポーターの方々に支えてもらえました。最初はそもそもサポーターが集まるか不安だったのですが、結果的に熱心な方が集まってくれて、活発に活動してくださったからこそ成功できたのだと思います。

私たちは芸術祭といっても、ただのお祭りをやるということではなく、地域の活性化を非常に大事にしています。
つまりそこでは、一緒につくっていくというのが大変大事なことだと思っているのです。
ただ作品を観るだけではなく、参加してもらい、一緒に作品を作っていく過程で育まれるものが芸術祭の結果にも影響すると思いました。

実際の結果としては、予想を上回る入場者数になったり、県北でつくったアーティストの作品が国内外で大変評価されるなど、芸術祭を通していろんな成果が上がったということをお伝えして御礼としたいと思います。
どうもありがとうございました。

南條さんがおっしゃった通り、サポーターの力なくして芸術祭の成功はなかったと言ってもいいくらい重要な存在でした。

今回のイベントでゲストとして登壇してくれた、2016年芸術祭参加アーティスト原高史さん(山側会場ゲスト)、力石咲さん(海側会場ゲスト)も芸術祭のことを振り返りながらサポーターと一緒に作品をつくる意義をこうおっしゃっていました。

原高史

常陸太田では梅津会館の歴史だったり、地域の方のインタビューだったりを物語にして窓に貼り、まちの風景を変えるという作品「Signs of Memory」をつくりました。みなさんの話を伺っていると、鯨ヶ丘も昔はすごく賑やかなまち・土地だったと。そこがだんだんと衰退していっている、そういった話が出てきたので、これからどうしていくんですか、というメッセージを作品に込めましたね。

今回とにかく窓の数が多くて、お家の数も百何十軒もあって、そこから実際には90件くらいインタビューして、千枚くらいのパネルを作ったんじゃないでしょうか。ずっと制作していたように思います。それを支えてくれたのがサポーターの方々です。
サポーターの方々が毎日自発的に制作場所に来てくれて、慣れた手つきでどんどん制作を進めてくれました。

しかも、いつの間にかサポーター同士の絆がどんどん強くなっているのも感じましたね。僕のところで制作を手伝ってくれていた方も、他の作家のところで手伝ったり、展示会場のサポートなどもしていて、すごく変化していっているというか、堂々としてましたね。
たまたま他の会場で会った時に、作品の解説を流暢にしてくれて、アートを通して何か変化していると感じました。
わけのわからないアート作品を見る前に、作品ができ上がる過程でいろいろなものに触れる。今までは普通に公園にある彫刻や美術展を観に行っても「なんだかわかんないや」だったのが、また違うアプローチから見ていくことで作品の見方が面白くなるんじゃないですかね。
サポーターの方々も、住民の方々も、確実に絵はどんどん上手くなっていきましたね(笑)

本当に僕も鯨ヶ丘の方々やこの地域と出会って、これからもいいきっかけがいただければ、またどんどん展開していきたいなという思いはあります。

力石咲

私は日立市常陸多賀駅前の商店街各地にニットがインベージョン(侵略)していく「ニット・インベーダー in 常陸多賀」という作品をつくらせてもらいました。旧銀行でニットが生成され、そこからまちにニットが侵略していくイメージでした。

最初はあまり告知の時間もなかったので、サポーターさんが集るか不安だったのですが、自分の作品の説明会にかなりたくさんの方が足を運んでくれて、そこで毛糸を編むデモンストレーションもして、興味を持ってくれた方々でチームをつくっていきました。一緒に作品を制作してくれたサポーターさんが積極的にまちゆく人にコミュニケーションをとって、作品の説明をしてくれたり、巻き込んで一緒に制作してくれたりしたのはとてもありがたかったです。

私の作品は、作っている時に興味を持つ人がとても多くて、声をかけてくれる人も多いので、そこから説明すると、面白い!と言って一緒に編んでくれたりします。自分が編んだものが会期中ずっと残るというのも参加する人にとってはモチベーションになったようです。サポーターさんに一緒に制作してもらう時は、ある程度こういう風にというのはあるのですが、敢えてサポーターさんにお任せして編んでもらうことで自由に表現してもらっていました。

あと、今回自分でもこんなに会期が長い遠方の展覧会は初めてで、どうしてもずっとその場に滞在できなかったので、サポーターさん達が自主的に作品を見回ってくれて、破損しているのを直してくれたり、また新しいところを編んでくれていたりして、自分が行く度に増えていっていたのがとても面白くてありがたかったですね。

自分がまちを毛糸でくるむ時には、普段見落としてしまうことに気づいたり、まちに対しての見方が変わることがたくさんあるんです。それをサポーターさんと一緒に制作することで、サポーターさんにも知ってもらえると嬉しいなと思って、いつも作品をつくるエリアの方と一緒に編んでいます。

この芸術祭を通して一番嬉しかったのは、サポーターさんと作品を一緒につくれて、こんな大きなことができたのはもちろんなのですが、終わってからのつながりがまだあるのがとても嬉しいです。それがすごい財産ですね。他地域で行われた私の展示を観に来てくれたり、メールで連絡をくれたり、今でも交流が続いていて、第二の故郷のような感じです。

  • _mg_9210_pros-min
  • _mg_0285_pros-min

ランチ&2016年開催時を振り返っての思い出などの意見交換

両会場共に、原さんや力石さんの作品制作に参加したサポーターさんがいらっしゃり、どんな気持ちで参加していたのかを懐かしい思い出話をするように楽しそうに話してくださいました。

前半のトークで身体も心もほぐれてきたところで、両会場の美味しい〜軽食を囲んでランチタイム!それぞれ料理長が腕によりをかけて県北にちなんだお食事を提供してくださいました。彩りも鮮やかなお食事に参加者も思わずにんまり♡
初めましての方同士も、久しぶりに会った方同士も話が弾みます。

  • _mg_9352_pros-min
  • _mg_9308_pros-min
  • _mg_9239_pros-min
  • _mg_9336_pros-min
  • _mg_9244_pros-min
  • _mg_0365_pros-min
  • _mg_0398_pros-min
  • _mg_0372_pros-min

今後に向けて、地域の魅力的な場所や人、体験などについてのディスカッション

お腹が満たされたところで後半は今回のイベントの本題。
「サポーターセッション 〜私のKENPOKU宣言!〜」のワークショップスタートです。
参加者のみなさんには事前にお聞きしたお住いの地域別でグループをつくっていただきました。

そして、こちらが用意した付箋やワークシートに段階を追って記入をしながらワークを進めていきます。

_mg_0555_pros-min

まずは、それぞれに「県北エリアのおすすめのポイントや体験」を記入していただきました。おすすめのポイントには、場所や人の情報を書いてもらいます。前回の芸術祭で印象に残っている場所や、自分だけが知っているとっておきの風景、面白い活動をしている人や団体…などなど。おすすめの体験にはポイントに関連する体験を書いてもらいます。訪れる人に見てほしいことや食べてほしいもの、参加してほしいもの…などなど。個人的な体験から歴史的な体験まで、とにかく思いつくものをどんどん上げてもらいました。

海側も山側もみなさん非常に集中して、おすすめポイントをたくさん付箋に書き込んでくださいました。

  • _mg_9415_pros-min
  • _mg_0449_pros-min

中には入り切らないくらいの文字を書いてくださる方も。

  • _mg_9424_pros-min
  • _mg_0464_pros-min

ひとしきりおすすめのポイントが出たところで、次はそれぞれが付箋に書いたおすすめのポイントを地図にマッピングしていきます。

「あれ?○○ってどの辺にあったっけ?」「へー!そんな場所あるんですね!」なんて言葉がグループごとに飛び交い始めます。グループによってマッピングのシールが集中する場所も異なっていて、どんなおすすめが出てくるのか気になります…!

  • _mg_0488_pros-min
  • _mg_9461_pros-min

できることややりたいことのところにはどんな小さなことでも自分が関われることを書いてもらいました。サポーターさんひとりひとり得意なことややりたいことが違うはずなので、このワークを通してその個性を知りたいという意図と、少しでも自分事として芸術祭を一緒につくるという視点で考えてもらいたいという願いが込められています。

  • _mg_0587_pros-min
  • _mg_9520_pros-min

グループごとに「私のKENPOKU宣言!」を共有してもらった後は、その中から全員に発表する内容を決めてもらい、いよいよ発表!
個性あふれる宣言が集まったので本当は全部をご紹介したいところなのですが、一部を抜粋してご紹介します。

  • _mg_0661_pros-min
  • _mg_9600_pros-min
  • _mg_9626_pros-min
  • _mg_0703_pros-min
山側
“食にスポットをあてた案なんですが、もともと私自身が茨城って美味しいものがたくさんある場所だなと思っていて、なので芸術祭でももっと食に関するなにかがあったらいいなと思っていたんです。つい先日旧山方町で大規模な芋煮会があって、そこにはパワーがある女性がたくさんボランティアで参加していました。なので、そんな女性の力を使って、茨城の美味しいものを提供する「山キッチン」ができたらいいなという話をチームで出したら、みなさんから、それぞれのエリアでもやったらいんじゃない?と言ってもらって、なので、色んなエリアで、地域の方が地元の食材を調理して提供する、そんな食堂みたいな「山キッチン」「海キッチン」を実現するために、私自身は有志を募ってプロジェクトチームをつくる手伝いができたらいいと思いました。”
海側
“私が住んでいるのが日立市の諏訪町というところで、このエリアにはたくさん素敵な場所があるんです。
光圀お手植の梅の諏訪梅林には長塚節の碑があって、地元の青少年の方々が梅林の手入れを実施しています。この歴史を後世に伝えたい!それから、高鈴小学校跡地のかみすわ山荘では、グラウンドでバーベキューなどの利用ができたり、ハイキングで日立市が見渡せて、日立の海がみれます。ここは昔、鉱山が栄え、閉鉱となり、市の施設となっているが、高鈴山の頂上までハイキングができて、軽自動車も通れるのでいろいろな活用が、できると思います。こんなたくさん素敵な歴史とそれを残すために頑張っている人たちがいるので、次の芸術祭ではそこにぜひ光を当てて欲しいです!”
山側
“私たちのチームはみんな大子に住んでいるチームで、3人は外からの移住、3人はもとから長く住んでいる人のなので、内外からの意見が出ました。
旧浅川温泉という前回妹島和世さんが足湯の作品をつくられた場所にまだ作品が残っているんですね。実は私がそこに11月から移住をしまして、1年後にそこでゲストハウスを開設するために地域おこし協力隊として準備を進めています。もともと私がキャンドルアーティストをしていて、夫がセラピストをしているので、2人の特技を活かしながらのゲストハウスにしたいと思っています。そこが次回の県北芸術祭までには外に向けた発信をして、人がくる環境づくりからできたらいいなと思っています。そして、次回も妹島和世さんの作品と合わせて、夕暮れ〜夜の風景がとてもきれいなのでアーティストのライブとか、キャンドルナイトをしたりしてコラボができたら面白いなと思っています。”
海側
“私は県北芸術祭があるまで、県北はほとんど行ったことがなかったんですが、日立市のサポーターをさせてもらったつながりで、日立市についても色々教えてもらった中に、団地問題があるという話を聞いたんですね。日立市には日立製作所の方の団地が数多くあって、かつては賑わっていたけれど、日立製作所の衰退と共に空き家になってしまっているそうなんです。そんなスペースがあるのであればぜひ活性化して、面白い場所になったら、住んでいる人も嬉しいかも。数ある団地をコミュニティスペースとか芸術祭中の来場者の宿泊スペースとかにしたら、そこに活気が戻って良いなと思いました!”

今回のセッションに参加してくださった方々はご自身が住んでいる場所への愛着が強い方が多く、観光案内所ばりに我々がまだ知らない魅力的な場所や歴史を語ってくださる方がたくさんいらっしゃいました。

  • _mg_0744_pros-min
  • _mg_9661_pros-min

みなさんの熱い思いを聞いて、南條さん、原さん、力石さんもコメントに熱がこもっていました。

今回参加者の方々から色んな情報をもらって、県北エリアの可能性が何倍にも開けたように思います。
その場所に住んでいないと見えない視点、実感が無いと見えてこない風景。
すでに知っていたように思い込んでいた事柄にも、もっと深い視点、独特の考え方、違う見方があって、どう読み解くのかということが実はとても大事なんですね。
こういった情報やサポーターさんの熱意が積み重なって、次の芸術祭に向けての新しいインスピレーションの元になると、県北らしい・県北にしかできない芸術祭になっていくのかもしれません。
参加者の方の熱がどんどん上がっていくのがこちらもわかるくらい、とても良い雰囲気のイベントになったので、これからもこういったサポーターさんたちとのセッションを開催していきたいと思います!

_mg_0358_pros-min

_mg_9675_pros_ok-min

 

そして、サポーターセッションと同時期に開催されていたこちらの2つのWS+展示にも多くの方にお越しいただきました。ご覧いただいたみなさまありがとうございました。

「カーゴ・カルト in KENPOKU」@常陸太田市 梅津会館、旧コウワ
[津田翔平ワークショップ「山のようなもの」を作る]@常陸大宮市 かわプラザ

  • _26a0790
  • img_0262
  • 0x8a3341
  • _mg_0807_pros-1